広範囲に発現する痛みの正体とファシアの存在
当院はファシアに注目しています。
一般的には余り耳にしませんが業界ではしばしば耳にする言葉で、最初国内に紹介された際に「ファシア=筋膜」と紹介されたようですが、先進国において非常に注目されています。
2022年5月イギリスの科学雑誌「New Scienntist」誌にファシアの特集が組まれ、原因不明の線維筋痛症や長引く慢性痛の原因はファシアが原因なのかもしれないと指摘されています。
当院ではファシアが生理機能を有するシート状の組織で体全体を覆っていると捉えています。
ファシアはそれぞれ独立して筋肉を包んでいるわけでなく、つながりあってお互いに影響を与えているので、ある部分のファシアが歪むことで別の部分の不調につながるケースがあると考えられます。
特に大きな手術を受けている方はファシアの歪みが出現し、そのストレスは脊柱を中心とした背中にかかります。
ファシアの歪みは下肢(股関節以降の脚)のファシアに伝わりファシア内で無菌性炎症が起き、痛みが広範囲に出現するので、背部の脊柱にかかっている背骨の歪み(サブラクセーション)やファシアの負担(ストレス)に対し、お灸をすることで、ファシアのネットワークを通じ膝や下半身の痛みが改善するという理論です。
江戸中期の医師・香川修庵著「一本堂行余医言」で現在の先天的側弯症や脊椎カリエスと思われる症状に背骨際のお灸をしたと記載されています。

ファシア(facia)は、日本整形内科学研究会が下記のように定義しています。
ファシア:全身にある臓器を覆い、接続し、情報伝達を担う線維性の網目状組織構造。臓器の動きを滑らかにし、これを支え、保護して位置を保つシステム。
筋膜:個々の筋線維、筋肉または筋肉群を包み、互いを分割および連結する線維性組織。筋や関節の動きを滑らかにしつつも、これらを制御して位置を保つ。
引用:日本整形内科学研究会
ファシア(facia)は日本語に訳すと、「筋膜」ですが、臓器、骨、筋肉、血管、神経などを覆う膜の相称です(筋膜もファシアの1つになります。)
浅層ファシアと深層ファシアが存在し、体の内側の広い範囲でつながっています。
丈夫なコラーゲン線維と柔軟なエラスチン線維で成り立ち、潤滑油のヒアルロン酸とプロテオグリカンを豊富に含んでいます。
ファシアは互いに張力を保ちながら存在しており、この張力のバランスが崩れることで骨格のくずれなどにつながり、疾患につながります。
成人のファシアは25億もの神経終末を含み、ファシア内を痛みが伝播する事が確認されています。
「ファシア=筋膜?」に対する質問には、ヘレン M. ランジュバン医学博士の以下の提案が分かりやすいと思います。
「筋膜」という言葉のさまざまな意味から生じる可能性のある曖昧さや誤解に注意する必要があります。なぜなら、この用語の一般的な意味は非常に曖昧で、ある種の結合組織以上のものを暗示している可能性があるからです。 「筋膜」には、疎な結合組織と密な結合組織、表層的な結合組織と深層的な結合組織、および多重層と単層の結合組織が含まれます。 コミュニケーションを促進するために、ここでは筋膜組織の特定の側面を説明するための 12 の具体的な用語を提案します。• 密な結合組織• 乳輪結合組織• 表層筋膜• 深部筋膜• 筋間中隔• 骨間膜• 骨膜• 神経血管路• 筋外膜• 筋内および筋外腱膜• 筋周膜・筋内膜キーワード: 筋膜、用語、結合組織、皮下組織、腱膜症
大きな手術を受けている場合は要注意
大きくメスがはいることで浅層ファシアが切開されます。
縫合すれば癒合(傷口がふさがること)しますが、本来の位置にするのは難しく浅層ファシアの歪みを生じます。
時間経過に伴い背骨への負担が増し、やがて下肢の浅層ファシアの痛みとなります。
この様な痛みに対して当院の施術は非常に有効です。
